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シュウェットカカオ 長崎修丈(ながさき まさたけ)さん

長崎修丈(ながさき まさたけ)さんの写真

私は中学生の頃にテレビでパティシエという職業を知り、その華やかな仕事ぶりに興味を引かれました。フルーツを使って彩り豊かに仕上げたケーキが画面に映るのを見て、芸術作品のように美しく、食べてもおいしいお菓子を作る仕事にあこがれ、菓子職人を志すことに。函館市内の専門学校で製菓を学び、卒業後にシュウェットカカオに就職しました。

学校で学んできたとはいえ当初は慣れないことが多く、もともと手先が器用でなかったこともあり、約2年間は雑用中心の下積み生活を送りました。少しずつケーキ作りに携われるようになったのは、3年目になってからです。正直なところ、下積み時代は苦しい部分もありました。ただ、それもすべて今に生かされているので、決して無駄ではなかったと思います。

入社して15年経った今は作業全般ができるようになり、自分の手を動かすだけでなく後輩の指導や育成を考える立場になりました。教える立場になってあらためて思うのは「技術を習得することの大切さ」です。

つまり、技術が追いつかないうちは、作業を急ぐあまりに仕事が雑になってしまいがちです。一方、技術が身につけば心に余裕が生まれ、丁寧な仕事ができるようになります。すると、作業をする時に「決まっているから」「そう教わったから」ではなく、なぜこの工程が必要なのかを考えることができます。そこから発展して「こうしたらおいしいのでは」と自分で考えながら、新しいお菓子を生み出すことにもつながっていきます。新たな発想は、知識と経験の積み重ねから生まれるというわけです。

長崎さんがお菓子を作っている写真

製菓業界は、幅広い分野の技術を学ぶために数件の店を渡り歩いて修行するのが普通で、当店でも5~6年勤めて札幌や東京の店に転職したスタッフが何人もいます。私のようにひとつの店に長く勤めるのも良いですし、最初に勤めた店をスタート地点として、ある程度自信がついたら他店に移って修業を続けるのも良いと思います。

当店は、菓子職人としてレベルアップするには最適な環境です。チョコレート、焼き菓子、ケーキ、バウムクーヘン、アイス、アントルメグラッセ(アイスケーキ)などの洋菓子を常時100種類以上製造しているので、当人のがんばり次第で幅広い成果技術を身につけることができます。もっと大きい企業だとセクション分けされ、ひとつの分野だけを専門に担当することが多くなりますし、もっと小さな個人店では携われる分野が限られてしまいます。その点当店はちょうど良い規模で、これから菓子づくりを学ぶ人にもお薦めできます。

お菓子づくりの道は決して簡単ではなく、軽い気持ちでは続かないかもしれません。何よりも大切なのは、「お菓子が好き」「ケーキが好き」という強い気持ちです。「独立して自分の店を持ちたい」との目標を持ってこの道に進むのも良いと思います。私たちパティシエが作るケーキやお菓子は、記念日など特別な日に食べることが多い食べ物です。誰かの幸せに彩りを添えることができる、パティシエや菓子職人を生涯の仕事にしてみませんか。

(取材時期:2021年5月)