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Etadokah(エタドカ) 林 遥斗(はやし はると)さん

林 遥斗(はやし はると)さんの写真

私はもともと料理人になろうと強く思っていたわけではなく、進路に迷った末に「どうせなら自分の好きな『食』を仕事にしてみよう」と、料理の道に進みました。実家の新潟から東京の専門学校に進み、料理の基本的な技術はもちろん、衛生管理や料理人として身につけておくべき礼儀など、多くのことを学びました。

「ある程度の料理経験がなければ、専門学校に入ってもついていけないのではないか」と思われがちですが、実は私も入学するまでは包丁をほとんど握ったことがありませんでした。心配だったので、「入学前にしておくことはありますか」と面接で尋ねてみたところ、「料理の練習はしなくてよいので、おいしいものをたくさん食べて舌を養ってください」との答えが返ってきました。変に自分流のやり方が身についていないほうが基本を素直に習得できる、との説明を受けて安心したのを覚えています。若い皆さんも、料理の心得がないからといって学ぶことをためらう必要はないと思います。

卒業後、旅行で訪れた北海道で、野菜・魚・肉のすべてがハイレベルであることに驚き、「こんな食材を使って料理がしてみたい」と思うように。当時働いていた新潟のイタリア料理店を辞め、函館の今の店で働くことになりました。料理人は誰しも、よい食材を使ってみたい、優れた食材でおいしい料理を作り、お客さんに喜んでもらいたいとの思いを持っているはず。朝とれた食材をその日のうちに調理できる函館は、とても恵まれていると思います。

林さんが厨房に立っている写真

店では、野菜や魚の下処理、メニューの仕込み、接客などを任されています。下処理や仕込みは地味な役割ですが、おいしい料理を作るためには大切な仕事です。「料理人を志すからには、料理長など花形のポジションを目指そう」と考える人が多いと思いますが、料理は上に立つ人の力だけで作られているわけではありません。地味な仕事をしっかりできるようになり、そこで働く気持ちを大切にしながら仕事ができたら、いつか上の立場になった時にも、お客さんによりおいしい料理を提供できるのではないかと考えています。

「人のために何かをしたい」「人を喜ばせたい」という精神がある人は、料理人に向いています。料理人を目指すきっかけは人それぞれで、「食べることが好き」「作ることが好き」という気持ちからスタートする人も多いでしょう。でも、料理を作ったら一歩進んで、「食べる人を喜ばせたい」との気持ちが芽生えるはずです。その気持ちを大切にして料理の道を進んでください。

(取材時期:2021年3月)