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キングベーク 西村香奈(にしむら かな)さん

西村香奈(にしむら かな)さんの写真

中学生の頃からお菓子作りが趣味で、休みの日にはお菓子を作り、学校に持って行って友だちと食べていました。作る楽しさと、食べた人に喜んでもらえるうれしさとが自分の中で大きくなり、高校生の頃には「将来は食の仕事に進もう」と決めました。

高校卒業後は函館短期大学付設調理製菓専門学校に進みました。当初は洋菓子の道を志望していましたが、学んでいくうちにパン作りに興味が出てきました。粉が生地になり、発酵してふくらみ、焼成してパンになるまでの一連の過程が奥深く、おもしろさを感じたからです。そこで、パンの老舗で製造技術をしっかりと学んでみたいと思い、昔から身近な存在だった地元のパン屋さん「キングベーク」を就職先に選びました。勤めてから今年で丸5年になります。この間に、生地の仕込み、焼き、レジでの販売・接客まで、パン屋の仕事はひと通り経験することができました。

パン作りを仕事にして、あらためてパンの奥深さを実感しています。パンは同じ材料を使ってもその日によって発酵の進み方が異なり、生地の状態を見ながら、もう少し寝かせておくか、それとも発酵を早めに切り上げて焼くかを判断するなど、生き物を相手にしているような難しさとおもしろさがあります。また、専門学校では時間をかけてひとつのパンをしっかり作ることを学びましたが、会社では学校で学んだ知識や技術を生かしつつ、手早くたくさんの量を作ることが求められます。パンの量も種類も学校で学んでいた時と比べ物にならないほど多いので、とにかく数をこなして早く慣れることが一番だと感じます。

西村さんがパンを作っている写真

働いていて一番うれしいのは、パンがお客さまの手に渡る瞬間です。レジを担当していると、自分たちが作るパンを心待ちにしているお客さまと直に触れることができ、「このパンが好きだからまた買いに来たよ」と声を掛けていただくこともあります。お客さまのおかげで、食べる人に喜んでもらえるようなパンを作りたいとの気持ちがますます強くなっています。

当社は2021年から、体に良いものを使ってより良い品質を目指すという考え方に基づき、保存料・改良剤を使わず、乳酸菌と酵素を入れてパン生地を作る「湯種製法」を取り入れました。ドイツのパン職人から直接伝授されたこの製法で作られたパンはしっとり・モチモチした食感で、食パンは耳の部分が薄くなる効果もありました。この製法を取り入れている店はまだこの地域では珍しいようですが、自分が今まで体験したことのない新しい製法を体験できたことや、それによってお客さまに喜ばれるより良い商品づくりに携われていることがうれしいです。今回初めて春の新商品開発の担当になり、これまでの経験や見聞きしてきたことを生かした商品を作ろうと構想を練っているところです。今後も新商品を開発する機会があれば、季節感や地元の食材を取り入れた、函館ならではのパンを作っていきたいと思います。

パン作りは楽しい半面、生地の仕込みでは何十キロもある材料を持つこともあり、体力勝負な面もあります。早さが求められるのである程度おおざっぱな面も必要ですし、仕上げの際には几帳面さも必要です。求められることが多いように見えるかもしれませんが、一番大事なのは「パンが好き」という気持ちで、それさえあれば大丈夫だと思います。自分の中の固定観念にとらわれず、いろいろなことを取り入れたりチャレンジしたりする姿勢があれば、きっと楽しく仕事ができると思います。

(取材時期:2022年1月)