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料理人向け「函館料理アカデミー」を実施しました

レポート
2021/09/02
料理人向け「函館料理アカデミー」を実施しました

函館市が主催する料理人向け講座「函館料理アカデミー」の第1弾が8月26日に開催されました。

 

石川県金沢市の料亭「日本料理 銭屋」主人の髙木慎一朗さんが講師を務め、「訪日観光客をもてなす料理人の役割とは」のタイトルで講演しました。その内容をレポートします。

 

「日本料理 銭屋」は、ミシュランガイド北陸版で2016年、2021年とも2つ星を獲得している名店。二代目主人の髙木さんは海外のさまざまな料理学会に登壇して日本料理の技法を紹介しているほか、世界各国の料理イベントや海外のシェフとの料理セッションなどにも数多く参加しています。

 

こうした経験を踏まえたうえで髙木さんは、「外国人のお客さんでも、(日本料理に触れる点で)相当な良い経験を積んでいる方は、一般的な日本人よりもはるかに敏感な味覚を持っている」と説明。「外国人だから○○が好きに違いない」「外国人には日本料理の繊細なだしの味が分からない」といったような誤った先入観を持たないことが大切だと指摘しました。

 

銭屋を訪れた外国人客が、万葉集や伊勢神宮の神事を引き合いに出して同席者にアワビの説明をしたというエピソードを紹介し、「日本料理を食べに来る外国人の多くは、味を楽しみに来るのではなくその背景にある歴史や文化を楽しむために来ている」とも話しました。

 

そのうえで、外国人をもてなすためには(1)料理の技術(2)歴史や文化に精通していること(3)外国語で自分の料理を説明できること(4)価値観の多様性を認識することの4つが必要だと説明しました。

 

最後に、吉兆の創業者・湯木貞一がヨーロッパ食べ歩きの旅から帰国した後に記した「世界の名物 日本料理」という言葉を紹介。「日本料理が世界で一番というわけではないが、世界にも似たようなものはなく、我々は大事にしなければならない」とその意味を解説し、「皆さんがそれぞれお持ちのアイデア、技術、経験をどう生かすかという点で、インバウンド対策を考えるのは非常に良いチャンス」と参加者を激励しました。

 

講演に続いて、石川県の郷土料理「治部煮」をさまざまな食材で作る調理実演を行いました。

 

「函館料理アカデミー」は、今年度中にあと2回の開催を予定しています。

2019年だけでも海外に26回出張したという髙木さん。コロナ拡大以降は行っていませんが、今なお各国のホテル・レストランから「いつになったら来られるのか」とオファーがあるそうです


「料理人は料理だけを伝承する役割にとどまらず、外国人にとっては日本を代表する文化の担い手に既になっている」と話す髙木さん


石川県を代表する郷土料理「治部煮」を題材に、伝統的な鴨肉と道南地域の食材を使った調理例を実演しました


北斗市・おぐに牧場の黒毛和牛と函館近海産のタラを使って治部煮を調理する髙木さん


海外では日本の食器を使わずに日本料理を提供するよう求められることも多いことから、今回は治部煮椀のほか、皿を使った盛り付け例も披露しました