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道南産米を青森県弘前市で醸した日本酒「巴桜」、春には新酒が登場

レポート
2018/03/12
道南産米を青森県弘前市で醸した日本酒「巴桜」、春には新酒が登場

 

日本酒「巴桜(ともえざくら)」は、北海道新幹線開業を機に、函館市と青森県弘前市との交流の中から生まれた酒。函館市の立蔵義春氏が丹精込めて育て上げた道南産酒造好適米「吟風」を原料にして、代表銘柄「じょっぱり」で知られる弘前市の「六花(ろっか)酒造株式会社」で醸造されています。巴桜の3回目の酒造りとなる2017年度は、2018年1月5日から仕込みが始まり、このたび2月16日に搾(しぼ)り作業が一昼夜かけて行われました。現在、貯蔵庫内で熟成中で、4月中旬には新酒として出荷されます。
巴桜は純米大吟醸の原酒。精米率40%(米一粒の60%を研ぎ磨いて、中心部分の40%だけを使用)で醸し、醸造アルコールや糖類を添加せず、かつ搾った後には水を加えることなく、原酒のまま瓶詰めされます。りんごを思わせる果実のような香りが立ち、口当たりは非常にやわらかながら、豊かなコクが感じられる濃醇なお酒です。
巴桜の名前は、函館港が「巴」の形に似ていることから函館のシンボルとされる「巴」と、日本有数の桜の名所として知られる弘前公園の「桜」を合わせたもので、二つの地域の架け橋に……という願いが込められたものです。企画した六花酒造営業部課長の相馬幸治さんは、「函館・道南地方では、長らく青森県の酒が地元の酒のように愛飲されていたけれど、やはり地元のお酒が欲しいとよく聞いていました。新幹線開業をご縁に『巴桜』を商品化できたことで、函館の人たちや観光客にとっても、より身近に感じてもらえる地酒を造ることができたのでは」と話し、出来映えにも自信ありと語ってくれました。2017年度の新酒は、2018年4月中旬から出荷され、函館市内の酒類販売店、スーパーなどの店頭に並ぶ予定です。720ml瓶のみ販売、税込3,240円。

 

六花酒造ではこのほか、函館近郊の江差町で栽培された「吟風」で作る純米吟醸酒「蝦夷山海(えぞさんかい)」や、北海道の旧銘柄米「マツマエ」を用いた特別純米酒「ガスバリ」も醸造しています。

 


六花酒造は、弘前市内に6つある蔵元のひとつ。3つの古い蔵元が合併して1972(昭和47)年にできた会社です。300年前、江戸時代に創業した造り酒屋がそのルーツ。現在、青森県下で2番目の醸造量を誇ります。

 


巴桜の醸造責任者で、製造部長の河合貴弘さん。酒造りは古くから、杜氏(とうじ)とよばれる責任者を中心に様々な工程が分業で行われるもので、普段は農業を営み、農閑期だけ蔵元で酒造りに携わる専門集団がその仕事を担っていました。現在は通年で酒造りや品質管理を行うために通年雇用が一般的になり、社内で人材育成したり、経営者自身が醸造を指揮監督する形に変化してきているそうです。

 


温度や湿度を最適にした麹室(こうじむろ)で、蒸した米に麹菌を振って混ぜ合わせ、麹を造る作業。酒造りの善し悪しを決める最も重要な工程です。(写真提供:六花酒造)

 


日本酒造りは、麹菌による米の糖化と、酵母によるアルコール発酵が同時に行われるのが大きな特徴です。タンクの中には、酒母(酵母が培養した液体)が入れられ、麹、蒸米、水を数回に分けて加えていきます。徹底した管理のもとで糖化・発酵が進んで熟成し、醪(もろみ)が出来上がります。

 


巴桜の搾りは、醪を「酒袋」と呼ばれる大きな布袋に入れて吊るし、醪の重さでゆっくりと滴り落ちる原酒を瓶に集めます。高級酒を造る際に用いられる方法で、「袋取り」「斗瓶(とびん)取り」といわれています。

 


搾った原酒は、斗瓶(18リットル瓶)におさめられ、暗がりで静かに澱引きや熟成を重ねながら、瓶詰めを待ちます。

 


巴桜は、化粧箱入りで説明書きも添えられます。土産や贈答品にも最適。